拡大から「着地」のデザインへ。人口減少時代にビジネスが担う役割
経済合理性のフィルターを通したとき、「課題解決が困難」と切り捨てられてしまう小さな地域。しかし人口減少はいつか共通課題となりうるもの。ビジネスは成長前提を脱却し「縮小」「着地」を許容する形へと変われるのでしょうか。|by Natsuki
「小さいまちだから、仕方ない」──そう聞くたびに、胸がうずきます。
山奥の小さなまちで暮らしていると、過疎化という課題の波を、日常の肌感として受け止めざるを得ない瞬間があります。筆者の暮らす町は、長年にわたり住民主体のまちづくりに力を注いできました。しかし、急激な人口減少の波に洗われるなかで、かつて地域を変えようと沸き立っていた気概は静かに影を潜めています。
そんな中、目立たないながらも切実な課題として立ち現れているのは、「次なる世代へ、どうやってこのバトンを渡すのか」という問いです。
経済合理性のフィルターが弾き出す「解決しにくい地域」
こうした地域課題の解決を模索するとき、地方交付税などの財政に頼り、町民一人ひとりが何役もの役割を兼任する地域においては、「関係人口」の創出や民間企業の力を借りることが現実的な選択肢となります。
しかし、地域が抱える課題には複雑なニュアンスが絡むこともしばしば。同じ土地で暮らす住民の間でさえ意識の共有が難しいものを、地域の外で暮らす人々と文脈を含めて丁寧に分かち合うことは簡単ではありません。また、経済的なスケールメリットが見込めない過疎地域では、ビジネス手法を用いた既存の「課題解決型」のモノやサービスが機能しにくいという限界もあります。
つまり経済合理性のフィルターを通したとき、世の中には「課題解決しやすい地域」と「課題解決しにくい地域」が選別されてしまうのです。資本主義経済が主軸とされる現代において、後者に振り分けられ、取り残された地域は、どのようにして課題を乗り越えていくことができるのでしょうか。
「人」という希少リソースの奪い合い
モノやサービスといった資本に頼れないのであれば、残された手立ては「人」の力にほかなりません。
しかし、その「人」さえも今や地域同士が奪い合う希少なリソースと化しています。町民以外によるまちの担い手獲得を目指す「ふるさと住民登録制度」や地域おこし協力隊など、各地で移住者獲得や関係人口創出の施策がしのぎを削っていますが、そもそも日本全体で人口が縮小しています。特定の地域に根を張り、日常的に地域活動を支えてくれる存在は、非常に稀な存在になりつつあるのが現実でしょう。
資金は潤沢じゃない。人手も足りていない。そうは言っても、ほか地域の取り組みを画一的に当てはめても効果は期待できない。八方ふさがりに見えるこの状況は、なぜ生まれてしまうのでしょうか。
「右肩上がり」という前提を疑う
その根源にある原因は、社会で広がるビジネスやサービスが、そもそも「右肩上がりの成長」を前提に設計されている点にあるのかもしれません。地域の課題を解決する目的であっても、もっとまちが経済的に豊かになるため、もっと人が増えていくため──現代のシステムの多くは、無意識のうちに「拡大」を目指す構造の上に成り立っているのです。
しかし、人口減少が避けられない、もはや明らかな現実となっている小さな地域にとって、果てしない「成長」は、もはや真の望みではない場合もあります。
人口減の現実を生きる人々が本当に求めているのは、今ここにある日常を変えることなく安心して営み続けられること。この土地で先人たちが代々受け継いできた自然や文化、人間関係を守ること。そして、その生活を無理なく維持するために「必要な分だけのつながり」を地域の外と結んでいくことではないでしょうか。
ビジネスは「拡大」から「着地」へ向かえるか
絶対的な成長を目指す従来のアプローチは、必ずしも唯一の「正解」ではありません。
急激な衰退を避け、地域をゆるやかに縮小させながら軟着陸させる──いわば「着地(ソフトランディング)」を前提とした課題解決も必要です。
成長を求めず、縮小を許容する課題解決型のモノやサービス。着地を目掛けた移行のデザイン。こうした前提を捉えたビジネスを展開することに対し先陣を切れるかどうかが、人口減少時代におけるビジネスの可能性を決定づけるのではないでしょうか。
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